川三部作もいいけれど
モリビトです。
先輩の言葉と、テレビ番組のおかげで、高校生の間にいろいろ名作を読んでやろうと思い立ち、次に出会ったのが宮本輝さんの「螢川」。この作品で芥川賞を受賞してから、10年余り経って初めて文庫本で手にとりました。名作=芥川賞or直木賞という方程式をそのまま受け入れたわけなのですが、たまたま、作者のペンネームとタイトルに惹かれて手に取ったのであります。
高校では山岳部に所属して、夏の合宿登山では富山から北アルプスを縦走したのですが、「螢川」の舞台はまさに富山。今、居を構えるきっかけがここにあったのかと思うほど、宮本輝さんの作品を贔屓にしています。
「螢川」と並び、「泥の河」「道頓堀川」と川三部作も読みましたが、「螢川」は他の二作と違い、舞台が富山です。話の中身も、十代半ばの青春時代のキラキラ感と切なさがあって、とても好きな作品です。
川三部作とは違いますが、数年前に執筆された「田園発港行き自転車」は黒部川や富山平野を舞台にした話です。こちらも諸所の場面で黒部川が出てきて、私は好きなお話です。
「ドナウの旅人」も国は違えど、川を舞台にしています。水源の一滴から、河口までの雄大な話に、どんどん引き込まれました。
宮本輝さんといえば、自伝的作品である「流転の海」シリーズが大作ですが、こちらは、3冊目までで挫折しております。
また、宮本輝さんのお話は関西を舞台にした作品が多く、京都に3年住んでいたことがあるので、舞台背景がなんとなくわかり、宮本ワールドにますますのめり込んでいきました。
輝さんの作品で、川三部作もいいのですが、私見から次の5つを紹介します。順不同ですが、
「螢川」
言わずもがなです。
「優駿」
三冠馬シンボリルドルフがモデルとなっているという話。輝さんが時々用いる得意のオムニバスリ・レー形式では良き作品であるかと。
「錦繍」
二人の書簡を交換して物語が進展していく秀作。
「森のなかの海」
宮本作品では唯一、飛騨が舞台で、阪神淡路震災を経験した女性の生き様を描く作品。モリビトは飛騨にも住んでいましたので、お気に入りの一つとして。
「三十光年の星たち」
普通に生きている人々にとって、たとえ30年後に小さな成果しか残らなくても頑張る、という人生訓のような話で、若い頃に読みたかった話。
高校生の頃からほぼ全作品を読んできたので、人生の場面ごとに宮本輝さんの影響を受けています。現在は螢川の舞台となった富山に住んでいます。いまだ蛍の嵐に包まれたことはありませんが。